1000の風

大晦日の今日、森川さんからのお手紙がわたしのもとに届きました。森川さんが私たちのことを語ってくださいというお言葉に甘えて、お手紙を書かせてここにいただきます。

「いつもお心一杯のお手紙うれしくうれしく拝見しております。
小さなコラム欄の一行の詩が縁で、お知り合いになれたことは決して偶然とだけでは済まされない不思議なものを沁々と感じます。またいつまでも雄太との出会いを大切にしてくださることは勿体ないと感謝しております。
 またこの頃では、雄太の夭逝を徒らに嘆き悲しむのは、もうよそうと妻と話し合っております。  新しいめぐり逢いをさせて戴いた中に 風のように 陽のように 花のようにきっと 生き続けているのだからと信じたいのです。
 お贈り下さった「さびしいときは 心のかぜです」早速に病室へ持っていき、少しづつ読んで聞かせています。大助くんの言葉や絵はややもすると挫けそうになる妻の気持ちをゆさぶり、力を甦らせてくれているようで、「もう一度元気になって 小松へ行き、山元先生や大助くんに逢えるようにならなくちゃ」と明るく云っております。
 観音さまの頁はいつも開けています。
「僕の上の星……」「さびしいときは……」何より本当にありがとうございました。
現在少しづつ回復しており、来年始めに予定されている腫瘍を取り除く手術にそなえて、一所懸命気力、体力を養生して居ります。
 まもなく今年も終わろうとして居りますが、来年が一層ご多幸ご活躍の年でありますように心から祈念致します。                                                                                                      森川拝」

 私も、雄太さんのお父さまとお母さまとの出会いは雄太さんが私に下さった大切なもののだと、確信しているのです。
 以前不思議なことが幾度もあったのです。お母さんからお手紙をいただいた翌日でした。NHK金沢の村井さんから私のところへ取材の以来をいただいたのです。これはきっと雄太さんが、私たちのそばにおられて、子供たちのことをもっと社会の方々に知っていただけるようにして下さったのではにかしらと感じました。お母さまからのお手紙の翌日に村井さんからお電話があったのは、私たちのそばにいてくださる雄太さんが雄太さんを誰よりも愛して居られたご両親のそばにおられないはずがないということを私に伝えてほしいと雄太さんが思われたのかなと思ったのです。それですぐにお家へお電話したのです。 電話に出てくださったお母さまは、「実は、この間から体調がすぐれなくておかしいなと思っていたら、大変な病にかかっていると今わかったのです」と言われました。そして「まだ雄太の方へは行ってやれないのよって雄太に言っているのです。雄太を十分に供養して、それから主人や雄太の弟のためにまだまだしなくてはならないことがあるから……」と。でも雄太さんを亡くされて、淋しくて、悲しくて気持ちの持って行き場がないともおっしゃっておられました。
 雄太さんはご自分のお母さまが今いちばんおつらいときと感じられて、なおのこと雄太さんがそばに『風のように、陽のように、花のように生き続けている』ということを誰かに知らせてほしかったのかなって思いました。

 12月の22日に浜松に講演会に呼んでいただいたのですが、会場には森川さんが贈ってくださったバラとカサブランカが届いていました。驚いて涙が出そうになったときに「雄太のことを語ってください」とおっしゃったお父さんのお言葉と雄太さんのやさしい笑顔が花束を前によみがえってきました。そのときの花ももしかしたら雄太さんだったのかもしれません。
 雄太さんのお父さまのお手紙で私は以前、三五館の星山さんが贈ってくださった「あとに残された人へ1000の風」という御本を思い出しました。

「私の墓石の前に立って涙を流さないでください。
私はそこにいません。
眠ってなんかいません。
私は1000の風になって吹きぬけています。
私はダイアモンドのように雪の上で輝いています。
私は陽の光になって熟した穀物にふりそそいでいます。
あきにはやさしい雨になります。
朝の静けさのなかであなたが目ざめるとき
私はすばやい流れとなって駆けあがり
鳥たちを空でくるくる舞わせています。
夜は星になり、私はそっと光っています。
どうか、その墓石の前で泣かないでください。
私はそこにはいません。
私は死んでないのです。」
 本をいただいたときに感じた詩の内容はあのとき、頭ではわかっていたつもりだったけど、私には通り一遍でよく理解していなかったなと今わかりました。雄太さんが、雄太さんのお父さまが、私の身の上に実際いろいろなことを通して教えてくださったこと、それは、人は亡くなっても、ずっと私たちのまわりにいてくださってるということ、そしていつも大きな力を下さっているということです。
 それからお母さまが今、とてもおつらい中、一所懸命病気と闘っておられること、それはきっと雄太さんがお母さまに「生きて、生きて、頑張れ頑張れ」と念じておられるからこそだと思うのです。
 どうぞ、本当に一日も早く元気をとりもどされますように、そして、ご一緒に雄太さんのお話をしたいなって思います。どうぞ今日も痛くありませんように、苦しくありませんように、元気になられますようにとそう祈っています。

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