しょうちゃんの笑顔

 障害がすすんで歩くことがむつかしくなったので、車椅子の子供たちが通う私たちの学校に他の養護学校からしょうちゃんが転校してきました。
 来たばかりのしょうちゃんに私たちは本当を言うと少しとまどっていました。なぜってしょうちゃんは、なぜかすぐに自分の頭を何度もこぶが出来て血が出るくらいこぶしで殴ってしまったり、そばにいる人にも爪をたててしまうことがあったからです。

 そんなしょうちゃんの様子に「しょうちゃんは他傷行為や自傷行為がある」というふうな見方をすることは簡単なことです。でも同僚の川場先生が「しょうちゃんは目が見えない。目が見えないということはそれだけでも不安かもしれないのに、だんだん歩けなくなったり、学校を変わったら最初は不安でいっぱいに決まってる。僕たちでしょうちゃんが毎日を不安なくおくれるようにしたいね」と言いました。


 ちょうどそのころ、私たちは秋の修学旅行の予定をたてていました。しょうちゃんはまだ来たばかりだったり、自分をたたいてしまったり、周りの人を傷つけてしまっていたので、もしかしたら旅行はむずかしいかもしれないという考えもありました。けれどやっぱり同僚の南先生が「しょうちゃんに楽しいことをいっぱい経験させてあげたいですね。一緒に旅行をすごせたら僕たちはもっと仲良くなれるかもしれませんよね」と言いました。

  「しょうちゃんは本当に音楽が好きだよね。なにかちゃんとした曲を口ずさんでいるみたい。あれ何の歌かな。もうちょっとでわかるんだけど」としょうちゃんの鼻歌に耳を傾けながらうれしくてしかたがないというふうに宮本先生が話しをしていました。


見ることが出来ないしょうちゃんに給食のときにも少しでも不安をなくそうと「今日はシチューだよ。おいしそう・・それからごはんとお魚のフライもあるよ」と必ず目の前給食のメニューを紹介して「しょうちゃんどれから食べるかな」と話しかけているのは上先生です。

 子供たちが何かで困っていて、泣いたり、怒ったり、自分を傷つけてしまったり、他の人を傷つけてしまったときに、けっして子供たちを責めるのではなく、まずどうしたら子供たちの不安がなくなるのか、私たちはどうしたらいいのかを考えようとする同僚と毎日を送れることが私にはとてもうれしいです。そしてとても幸せです。そして子供たちもきっとそうに違いないと思うのです。

 今、しょうちゃんの頭にはこぶがほとんどなくなりました。秋に出かけた修学旅行の写真はどれも笑顔でいっぱいでした。私たちはそんなしょうちゃんといられることがやっぱりとてもうれしいし幸せだなあと思います。 

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