スキーは大好きです

雪国育ちだからでしょうか。「スキーはどうですか」とよく聞かれます。「スキーはすきです」って答えると、「しゃれですか」って笑われちゃうけど、そうじゃなくて、上手じゃないし、シーズンに何度もいけるわけじゃないけど、スキー大好きなのです。
 父は山登りやスキーをずうっとしていたから、私たちにもよくスキーを教えてくれました。一番最初は近所のなんでも屋さんに売っていた竹スキー、それから長靴を革のベルトで止めるスキーで真っ赤でぞうさんの絵が描いてあったので、私たちはそれをぞうさんスキーと呼んでいたのですけど、それですべりました。大学は富山だったので、石川よりももっと大きなスキー場がたくさんありました。
 走るのも鉄棒も苦手だけど、それからボール競技なんてもっと苦手で、ドッヂボールは逃げてばかしだし、バレーボールはとんでもないところにボールをとばしちゃうし、テニスや卓球はボールがきてからラケットをふるし、本当になんにもできない運動音痴なんだけれど、スキーは重力に逆らわず、ときどきスピードを加減するだけで、下へ降りていけるということが私にそのスポーツを可能にさせているみたいなのです。それでね、どんなに高いところでも、チャンピョンコースとかダイナミックコースとかでも、なんとかどうにか降りてくることはできるのです。スキーは力がなくても、体力があまりなくても、降りていくだけならなんとかできるので、ずいぶんお年を召した方でも長くスキーをされるのはそういうところに理由があるのだと思います。
 だけどね、私、スキーをはいて歩いてのぼるのが力が極端になくて、苦手なのと、それからリフトにのるのがだめなのです。
 「私、リフト下手なの。びっくりしないでね」って最初に言うと、みんな「どんなふうに?」って聞くけれど、リフトからものを落とすとか、リフトから私自身が落ちちゃうというのを何回も何回もしてるのです。
 おっちょこちょいなのがいけないということはわかってるのです。でも失敗がぜんぜん積み重ならないで、またやっちゃうのです。
 乗るときに、あわてたり、スキーがたてになったりして、それで、乗り口で落ちてしまうというのはしょっちゅうだけど、真ん中で落ちたこともなんどもあります。
 言い訳になっちゃうけれど、私には私なりの理由があるのです。たとえばね、リフトに上手にのれたなって安心して、ちょっとスキーをみるとさきっぽに雪がたくさんついてるから、そんな雪って妙に気になって、手でその雪をぽんぽんってはらおうと思って、手をスキーのほうへのばしたら、重心がくずれて、そのまま前へどーーんって落ちちゃったことがありました。けっこう高いところから落ちたからこわかった。
 それから、雪がたくさん降ってリフトからでも届きそうなくらい積もっていると、スキーの先で雪にさわりたくなるじゃないですか。そしてさわったら、雪にスキーがささってはずれなくなって、そのまま落ちて、雪が深いから怪我はしなかったけれど、滑るところはそこから谷ひとつくらいもうーーんと離れていて、体がおふろにつかってるみたいに沈んで、つぎつぎにくるリフトのお客さんに大丈夫かあって聞かれたら、恥ずかしいからちっとも大丈夫じゃないけど、「はあい、大丈夫です」って明るく答えるんだけど、もう落ちたときに外れたスキーは深い雪の中に埋もれてどこへいっちゃったかぜんぜんわからないし、深い雪に足はごぼって(もぐって)歩けないし、(あーあ、雪に届くかななんて思ってさわらなければよかったな)って後悔するけれど、あとのまつりなのでした。
 T字バーのリフトに乗ったら最悪で、必ず前の人がつけたスキーのあとから脱線しちゃって、スキーの進む方向とリフトの進む方向がどんどんずれていって、力がないから修正なんてできず、体が斜めになってそれからドシーンと尻餅をつくのです。途中から歩いているのはやっぱりカッコ悪いです。
 すべっている時もなぜだかころんだとたん靴ごとぬげてスキーに靴がくっついたままスーと下にスキーが流れて言っちゃったときも、片足で滑っていくんだけど、もう片足が靴下だから、滑っていくスキーをみて笑われて、靴下姿を笑われて、(あーあ、今日もわらわれちゃった)って思ったのでした。
 もう失敗をあげたらきりがないのだけど、ゴンドラにスキーだけのせたら、もうそのゴンドラはずいぶんむこうまで行っちゃって、自分が乗れず次のにのろうとしたら、もう他の人が乗ってて、その3つあとのに乗ったら、降りるときにスキーをおろせず困ったり、一番頂上までのぼって、「いい景色」なんてのんきなこと言って、それから道を間違えて裏っかわへ降りていってしまったら、そこは上ではつながってるのだけど、下は何キロも離れたスキー場で、リフト券は持ってたのだけど、おさいふは忘れてて、下からまた上へのぼろうとしたらそこのリフト券は持っているのと違うリフト券じゃないといけなくて、だからリフトにはのれず、友人にはぐれて、電話もできず、何度も放送がかかっても私がいないから、すんでのところで、捜索願いがでるところだった……ということもありました。
 力がないから、スキーとポールを持って歩いていると息がはあはあ切れちゃって、頑張ってるんだけど結局最後は「持とうか」ってスキー二本を友達がもって、私はポールをふた組み持つということになってしまったり、靴の金具がかたくてはずせなかったり、もうありとあらゆる迷惑をかけどうしのスキーなんだけど、だけどスキーは大好きでやめられないのです。
 ね、みんな、恥ずかしいからもう一緒にいかないとか連れていかないなんて言わないでね。

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