ひさしぶりのみっちゃん

  養護学校で出会った卒業生のみっちゃんに何年ぶりかで会いました。みっちゃんは私の顔を見たとたん、「作業所で働いています」「お菓子やさんで働きたいけど、むつかしいね」と言いました。みっちゃんがすぐにそんな話をしたのは、そのことがいつもみっちゃんの心の中にあって、それが心からあふれるくらい、話したかったことだからなのだと思います。 みっちゃんの話はずうっと続きました。「養護学校の時、みっちゃんは独り言多いから、お仕事難しいと○○先生が言われました。みっちゃんいつもうろうろしているから、みっともないと△△先生言われました。平成5年の10月21日やったね」


 みっちゃんのあいかわらずの記憶力のよさに、 最初はすごいなあと感心ばかりしていたけれど、そのうちに、みっちゃんのことがいとおしくていとおしくてたまらなくなりました。


 私たちは子供たちと一緒にいて、子供たちのためになるのではないかと思って、いろいろなことを言います。「たくさん食べないから大きくなれないんだよ」「もう中学生なんだからしっかりしないといけないよ」


 でもこんなに長い間、私たちが言ったことに、心を痛め続けている子供たちがいるということには、少しも考えがおよばないのです。みっちゃんの心の中には昔とても傷ついたことがたくさん忘れることなくたまっていて、お仕事につきたいなあと思う度に、その言葉がよみがえってくるのだと思います。そしてまた悲しい気持ちでいっぱいになっているのではないでしょうか?


 みっちゃんのそばにおられたお母さんは、やさしく微笑まれながら、みっちゃんが昔のことを口にするたびに、「みっちゃん、がんばりやさんで、今、縫製班でがんばってるもんね。このあいだも、作業所の中でも2番くらいに上手ってほめられたんだよね」「みっちゃんはやるときにはきちんとやれるから、いつかお仕事だってつけるよね」「みっちゃんのおしゃべり楽しいって言ってもらうこともあるよね」とみっちゃんとそして私にお話してくださったのでした。本当は、ありのままのみっちゃんがとても素敵だということをどうして私たちは気がつかなかったのだろうと思います。そして、私たちの言葉はこんなふうに子供たちを傷つけ続けることがあることを忘れないでいなようと思いました。

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