16 眠ること
「死ぬこと」について考えたら、なんだか、それで、あとがきにいってしまいそうなのだけど、もっともっと、いろんなことを書きたくて、順番はごちゃごちゃになってしまうけれど、思いつくまま、いろんなことを書きます。
身体もそれから、時には心もすごく疲れちゃったときに、「でも、一晩眠ればなおるから」って、おまじないのように言って、そして、眠って朝になると、ずいぶん楽になっていることがよくあります。眠るということはどういう意味があるのでしょうか?
学校の子供たちの中で、眠りにつくことを怖がっているのじゃないかと思うお子さんがときどきおられます。いいえ、養護学校の子供さんだけでなく、多くの子供さんたちが、眠りにつくときは、お昼間に比べて、特別な様子を見せることに気が付くのです。
子供さんが、ずいぶん大きくなってふだんは、お母さんからすっかり離れて遊ぶことができるのに、夜になると、いつのまにかお母さんのおふとんに入ってきて、一人では眠ることができないということがよくあるし、それから、ふだんは指をすうこともしなくなっているのに、眠るときだけは、指を吸ったり、心を落ち着ける特別な毛布が必要だったり、まるで眠りにはいるときには特別な勇気がいるみたいだなあと私、よく思うのです。それから、赤ちゃんの中には、夕方になると、お腹がいっぱいでも、おむつが濡れているのでもないのに、泣きやまなくて、おうちの方が困って、車に乗せてドライブしたり、それから、ずっと抱いていたら、やっと眠ったのよなんて話をよくうかがうことがあります。育児の本に「夕暮れ泣き」と書かれているのを見たことがあります。そして、お母さん方の中にも、赤ちゃんが眠ると「ああ、どこかへ行っちゃうようだ」と感じたと話してくださる方がおられます。
やっぱり夜の眠りというもので、特別なものなのでしょうか?
でも、眠ることはとても楽しみです。最初に書いたみたいに、眠れば、身体が楽になったり、心が楽になれる気がするし、それから、温かく優しいベッドの中に入るのはなんとうれしいことでしょう。
大ちゃんは詩でこんな事を書いています。
宇宙の色が
夜眠るとき
頭の中に
広がってきたんや
俺の心が引っぱられる
私、もしかしたら、人は眠るときに、大きな力、言い換えれば宇宙全体とつながることができるのじゃないかしらとそんなふうに思うのです。起きていても、今まで書いたように、ときどきつながることはできるのだろうけれど、でも、眠っているときは、もっともっとしっかりとつながることができるのじゃないかってそんなふうに思うのです。
ロシアに、47年間どうしても眠れなかったという女性がいるそうです。その方はテレビの中のインタビューでこんな風に答えておられます。
「眠れないということは、肉体的な痛みや苦しみよりも、もっと深いつらさです。それは孤独というつらさです。単に夜の闇に閉ざされた中で、たった一人目をさましているという孤独感でなく、果てしないたとえようのない深い深い孤独でした」
彼女は、47年眠れなかった後に、眠りをとりもどすですが、そのときのことについて、「真の孤独を体験した私は、再び眠りを取り戻すことによって、愛という物がどんなにすばらしいものかを理解することができました。人間は寝ている間に、深い意識を超えた世界に入ります。眠りを通して共通の『命』を生きるのです。そこには命のつながりがあって、皆、無意識の中で温かい思いを交換しあっているのです」と言っています。
ナチスの恐ろしい拷問の中に、眠らせないというのがあったのだそうです。眠らせないということは、恐ろしい肉体の拷問にも負けないほど、人間にとっては苦痛だそうで、眠らないと精神が破綻をきたすのだそうです。それは疲れを回復できないと言うことだけでは、おそらくないのですね。きっと心がつらくてつらくてたまらなくなるのではないでしょうか?
今まで、宇宙はデジタルで秩序だっているのだろうと思うということを書いてきました。私はまた本当に突拍子もないことを書くのですが、携帯電話というもののしくみは、いったいどうなっているのでしょう。
このあいだ、ペルーから帰ったよという電話を成田でちょんみさんにしたのです。「はいはーい。今ね、私、韓国にいるんだよ」
いつもと同じようにかけた電話だったのに、ちょんみさんは私の電話を韓国で受け取ってくれたというのです。
私の電話の電波は、石川県や遠く北海道や沖縄まで探して、そして、韓国のちょんみさんの携帯電話を見つけ出したのでしょうか?
おそらくは何千万個とある携帯電話に、瞬時に私の携帯がつながることができるのは、よくわからないけれど、大きな携帯や、電話や、パソコンのインターネットの独自の宇宙が広く広く広がっているからでしょうか?そして、私の携帯がここにいるよということが、携帯も宇宙に対して知らせていて、宇宙からも、ああ、山元の携帯はあそこにいるんだなあ・・・ちょんみさんの携帯はあそこにいるんだなあってわかっているからなのでしょうか?
そして、私は人がつつまれている大きな宇宙も、携帯電話に少し似ているのかなと思うのです。
変わっているねと言われてしまうけれど、私は、そんなことをぼおっとつい、考えてしまうのです。
私たちはそれぞれ、自由に自分の気持ちで、いろいろな判断をして、人と出会って生きています。でも、大きな宇宙といつも、どこで何をしているかということがつながっていられて、そして、いろいろなことをデジタルで交換しあうこともできる。
そして、夜眠るときには、宇宙と私たちは、つながるというより、ひとつになって、解け合っていられるのかなとそんな気がするのです。
それなのに、どうして、子供たちや私たちは宇宙とつながる、眠りをときに、おそれて、母親や、誰かと一緒に眠りたくなるのだろう・・・
本当に考えていてもつきないのだけど、でも、やっぱり夜の眠りは特別なんだろうと、またそう思うのです。