たき火 

 大ちゃんが家に遊びに来てくれました。お日様が出ていて、青空なのに、空からは静かに大きな雪が降ってきます。
雪を降らせているはずの雲の姿が見えないから、まるで、空中から雪がわいているようで、不思議です。

お天気の中で
花びらの雪がおりる
こんな日は 雪も
たのしいことを
考えとるやろ

 そっかあ、雪も楽しいんだと話しながら、私たちもとても楽しくそんな空の下を歩いていました。遠くにたき火が見えました。誰か知らない人がおられるからお話するのがにがてな大ちゃんは嫌かもしれないなあって思ったのですけど、でもたき火がめずらしくて、たき火にあたりに行こうとさそいました。
大ちゃんは少し考えてから「そやな」と言いました。
 「あたらせてください」と火の番をしておられたおじいさんにお願いすると、おじいさんは「あたっていくこっちゃ。火はありがたいもんやぞ」と言って下さって、私たちはおじいさんのお隣に立ちました。おじいさんは私たち二人がいったいどんな関係なのかなあと不思議に思われたのでしょうか?私に「弟さんか?」と尋ねられました。「そうじゃないんです」「兄さんか?」大ちゃんは背も大きいのでそんなふうにも見えたのでしょうか?「そうじゃなくて、お友達なの」
おじいさんは「そうか、そうか」と言ってまた火にあたらしい木を入れておられました。
それからポケットから紙につつんだものを私たち二人にくださいました。何だろうと思って開けたら、油であげたか焼いたかしたかきもちでした。きっとおうちで作られたかきもちです。ああ、昔、お友達の家で、こんなかきもちをいただいたことがあるなあと思い出しました。いろりの上に金網をのせ、お箸でひろげるようにおもちをかきながら、焼くのです。びっくりするほど大きくなって、とてもおいしかったのを覚えています。今日、いただいたのは油で焼いてあったけれど、でも昔のなつかしい味がしました。
 大ちゃんはそのあいだ、一言もおしゃべりはしなかったけれど、ありがとうご歩き出して、少し行ってから、こんな詩をつくりました。 

火って不思議やな
となりの木に分けてやっても
火は少なくならんもん
火は心の中の
やさしい気持ちと
おんなじなんやな

 大ちゃんはあのときおしゃべりしなかったけれど、火を見ながら、おじいさんのやさしい気持ちや、かきもちのことをこんなふうに考えていたのかなあと思いました。
火もやさしい気持ちもあたたかくて減らないもの・・だからあたたかい気持ちはどんどん人にあげてもなくならないから大丈夫なんだよね。

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