地震の日

神戸で大きな地震が起きた朝のことでした。テレビを見て、地震が大きそうだということはすでに知っていても、まだ情報もよくわからず「けがをした人がいないといいけれど」と私はのんきなことを考えていました。でも大ちゃんは学校へ来るなりこう言いました。「けさの地震すごかったな 美浜の人は 地震も火事も台風も 何もおこるなと思っとるやろな」と言いました。前の年に原発のことを一緒に勉強したときに、チェルノブイリでおきた事件のことや、原発の近くに住んでいる人たちの不安についても勉強したので、大ちゃんはそのことを覚えていたのだと思います。まだ誰も地震と原発について報道していないとき、大ちゃんは真っ先に感じていたのだとおもいます。また「地震の神戸 赤ん坊にお湯もってったり ミルク持ってったり 俺のとこにもな 今度赤ん坊が生まれるんや」と言いました。何か大変なことがおきるとまっさきに赤ちゃんや弱い人が真っ先に犠牲になってしまうということを大ちゃんは知っていたのです。大ちゃんも学校で分けられてこの学校へ来ていたり、その他でこかで分けられていたりして、もしかしたら自分のことを弱い立場にいると感じているのかもしれません。だからこそ大ちゃんは他の人の心の痛みがわかるのではないでしょうか?それなのにわたしったら、朝からテレビにしがみついてちっとも勉強をはじめようとしない大ちゃんに少しあきれて「大ちゃんいいかげんテレビはやめて勉強しようよ」と言ったのです。こんなことを言う私に大ちゃんは「今神戸のことを知るのが一番大事や」って言いました。そして「日本中のみんな 悲しみでいっぱいやから 俺、勉強も ようできん」と言いました。たとえしばらくたってから(今私に何ができるんだろう)と考えていたとしても、私にはやっぱり神戸の地震はよそごとと言う思いがその時はあったのかもしれません。

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